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がん(腫瘍)について

ターミナルケア

院長が麻布大学附属動物病院で腫瘍科のレジデントを6年間やっていたためでしょうか!?「もう手の施しようがありません」と言われどうして良いか分からなくなった飼い主さんが来院されます。
きっと 必ず何かしてあげられることがあるはずです!!
少しでも、一緒にお力添えできればと考えております。

ターミナルケア(Terminal Care)とは、末期がんなどに罹患した患者に対する看護のこと。
終末(期)医療、終末(期)ケアともいいます。

当院では、悪性リンパ腫の治療を行っています

悪性リンパ腫(リンパ肉腫) は、 抗がん剤 によく反応し治療効果も期待できる血液系の悪性腫瘍です。飼い主の方が喉や顎のあたりのしこりや腫れに気付き発見されることが多いようです。犬での発生頻度は10万頭中24頭であり、人の約2倍の発生率であると報告されています。好発年齢は5~12歳齢、ゴールデンレトリーバー、シェルティそしてシーズーに多く認められます。最近では、若齢(1~3歳齢)のダックスフントにも頻発しております。無治療の場合の平均生存期間は60~100日、すなわち約1~3ヵ月間です。
抗がん剤に対する反応(寛解率)は犬で約80%、猫では70%であり、1年生存率は約30%、2年生存率は約10%です。(数字は文献などにより異なる)少数ではありますが長期生存例も報告されています。
当院では、常に数頭の悪性リンパ腫の抗がん剤による治療を行っております。
この病気の診断方法は特に大切です。
触っただけや、血液検査だけで診断するものではありません。
現在は、新Kiel分類に基づき治療方法も異なります。
無治療の場合の生存期間は約1~3ヵ月間です。診断するまでに時間がかかれば、残念ですが死期も早まるのです。
診断後は、進行度(1~5段階のステージ)と全身状態の把握(サブステージ)がとても大切です。
現在は、インターネットで検索すれば誰でも簡単に病気のことを調べることができます。
最近、特にうれしいことは飼い主の方が病気について本当に熱心に勉強してくれていることです。
結果的に話がスムーズに進み、動物たちの長生きにつながるのです。
動物の健康の大きな鍵は、飼い主さんが握っているのですね!

当院によく来院される動物の「がん」

リンパ腫、肥満細胞腫、乳腺腫瘍、皮膚腫瘍、甲状腺腫瘍、口腔内腫瘍、消化器腫瘍(胃や腸など)、泌尿器腫瘍(膀胱や腎臓など)、鼻腔腫瘍、血管周皮腫、 腹腔内腫瘍(血管肉腫など)、胸腔内腫瘍(肺がんなど)、生殖器腫瘍(精巣、卵巣など)、骨肉腫など、肛門嚢アポクリン腺癌など

腫瘍診療の流れ

腫瘍には、良性と悪性があります。
良性の腫瘍は、通常、命に係わることはありません。対して悪性の腫瘍は、一般的に「がん」と呼ばれるものであり、周囲の組織に浸潤したり、遠隔転移することで命に係わることがあります。
腫瘍診療の流れは
① 先ず、「できもの」の大きさ、位置、いつから大きくなったのか?等を把握し、レントゲン検査やエコー検査を行い、その 「できもの」の状態やどこまで進行しているかを確認します。また「できもの」に細い針や太めの特殊な針を使い、細胞や組織を採取し検査します。
ここで、「がん」が疑われる場合は、
② 「できもの」の周囲のリンパ節の状態を確認します。
③ 「できもの」が遠隔転移していないかレントゲン検査、超音波検査で全身を精査します。
 (紹介病院にてCT検査を行う場合もあります)。
④ 必要に応じて、血液検査・尿検査等から、全身状態を把握します。
これらの検査結果から、「できもの」の診断を行い、ワンちゃん・ネコちゃんに最善の治療方法をオーナー様と話し合いながら決めていきます。

「がん」の治療について

「がん」の治療には外科的療法、放射線療法、化学療法、BMR療法等があります。
しかし、どの治療を行うにもオーナー様とワンちゃん・ネコちゃんおよび我々スタッフが一丸となり立ち向かわないとその効果は期待できません。
● 外科療法
「がん」が限局している場合、根治(完全に治せる)が期待できる治療法です。
または根治ができなくても緩和(状態の改善)を目的として今後の生活を楽にしてあげる場合にも行います。
● 放射線療法
「がん」が限局しており、外科療法を行うことが困難な場合や抗癌剤の効果が期待できない場合、また放射線療法の効果が期待できる場合、紹介施設での放射線療法を治療オプションとして提示させて頂いております。
● 化学療法
いわゆる抗癌剤を使った治療法です。血液の「がん」やリンパ腫、また全身に拡がった「がん」に対して行う治療法です。 抗癌剤と聞くと副作用をご心配されるオーナー様もいらっしゃいますが、当院では食欲不振・嘔吐・下痢などの副作用で体調を崩さない治療を心がけております。
● BMR療法
上記の治療法とは違い、自分の免疫力を上げることで「がん」と戦う方法です。

「がん」の顔は画一ではありません。診断検査や治療法も必ず決まったものがあるわけでもありません。常にオーナー様との話し合いの上でご納得の頂く診療を心がけております。
些細な事でも構いません。お気軽にご相談下さい。

例えばこのような症例

脳神経系のリンパ腫

食欲不振、瞳孔不同で来院され、諸検査により脳神経系のリンパ腫と
診断した。
抗がん剤治療により改善がみられている。

消化管バイパス手術

激しい嘔吐が認められ、画像検査により十二指腸に腫瘤が確認された。
腫瘤は広範囲に浸潤していたため摘出不可能と判断し、消化管の通過障害を改善するためにバイパス手術を行った。
術後、食欲が改善し、嘔吐することはほとんどなくなった。
生検の結果、腫瘤は腺癌であった。

舌の腫瘤

舌に発生した腫瘤を摘出した。
舌の機能障害も認められず、経過良好である。

口唇の形成外科

口唇に発生した腫瘤を切除した。
外貌の変化を最小限にするため、口唇を形成した。

猫の消化器型リンパ腫

食欲不振と嘔吐を主訴に来院され、諸検査によって腹腔内に腫瘤が確認された。
試験的に開腹し、複数の腸間膜リンパ節が腫脹していたため一部生検した。
病理検査により消化器型リンパ腫と診断され、抗がん剤治療により改善がみられた。

猫の移行上皮癌

持続的な血尿・排尿困難を主訴に来院し、超音波検査で膀胱内に腫瘤を確認した。
手術にて腫瘤を摘出し、病理検査により移行上皮癌と診断された。
血尿はなくなり、排尿も良好である。

直腸腫瘤

血便を主訴に来院し、内視鏡で直腸に腫瘤が確認された。
直腸粘膜プルスルーを実施し、病変部を切除した。

回盲部に発生した腺癌

食欲不振と持続的な嘔吐を主訴に来院。画像検査にて結腸領域の腸閉塞が疑われた。
試験開腹を実施し、盲腸〜結腸に腫瘤性病変を認め、
回腸〜上行結腸までを切除し吻合した。
術後、食欲が改善し、嘔吐は認められくなった。
病理検査により、腺癌と診断され、抗がん剤治療により改善がみられている。

結腸に発生した腺癌

持続的な血便を主訴に来院。内視鏡検査にて、結腸に腫瘤を確認。
手術にて腫瘤を含む結腸切除を行い、
腸間膜リンパ節の腫大もあったため一部生検した。
病理検査により腺癌と診断されリンパ節の転移も認められたが、血便は改善した。

肝臓に発生した腫瘍

食欲不振を主訴に来院。画像検査にて肝臓の外側右葉に腫瘤が認められた。
手術にて腫瘤を切除した。
病理検査にて、肝細胞腫瘍と診断された。
術後、食欲元気共に改善した。

腎臓に発生した腫瘤

食欲不振を主訴に来院。画像検査にて左側腎臓の腫大と機能不全が疑われた。
また、血液検査で貧血が認められた。
食欲不振および貧血の原因が、左側腎臓の病変と考えられた。
手術にて左側腎臓を摘出した。
術後、食欲元気共に改善した。

盲腸に発生したGIST(消化管間質腫瘍)

元気消失と食欲廃絶、軟便を主訴に来院。各種検査より腹腔内に手拳大の腫瘤および腹水を認めた。
手術にて、盲腸の先端から発生した腫瘤を摘出。
病理検査により、GIST(消化管間質腫瘍)と診断された。
術後は症状が改善した。

左上眼瞼に発生した肥満細胞腫

左上眼瞼できた3mm大の皮膚腫瘤を他院で肥満細胞腫と診断され、セカンドオピニオンを求めて来院された。
手術にて腫瘤摘出後、上眼瞼が大きく欠損するので、眼瞼横の皮膚をスライドさせる眼瞼形成術を実施した。

術後は機能的、外見的にも問題は起こらず、経過良好である。